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2012年4月12日

そこに音楽さえあれば(愛などいらない)

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円山まどかです。


そんなわけで、今日発売の『月刊少年マガジン』に、羅川真里茂先生の『ましろのおと』のノベライズを掲載いただいています。本編のうしろに載っかっております。帰省して早々恐縮でぶっ倒れそうですが、よろしくご覧いただければと思いますTwitterで書いた宣伝のコピペ)

で、打ち合わせで何度か月マガの編集部にお邪魔したのだったが、そのたびに飾ってあるフェンダーのムスタングにばかり目を奪われていたのだった。楽器オタクの性といえよう。


そう、円山は楽器オタクなのである。音楽オタクは数多かれど、意外といない楽器オタク。テレビや街頭で耳にする以外AKB48の曲をちゃんと聴いたことはないけれど、ディジュリドゥのCDは嬉々として聴く……そんな感じ(ディジュリドゥとはオーストラリアの先住民族・アボリジニが使用する笛。シロアリに食われて穴が空いたユーカリの木を再利用するロハスな楽器なのである!)

円山のなかの「うらやまランキング」において、「彼女がいるやつ」「彼女と一泊を過ごすやつ」「彼女と一泊してメイクラヴするやつ」さえも差し置いていまだに首位を独走しているのは、以前川原で会ったおっさんの「はじめて触った楽器がチャランゴだった」なのである(チャランゴとは南米アンデスの弦楽器。アルマジロの皮を使用するといういかにも民族色豊かな楽器なのである!)音楽があれば愛などいらない。


あと「そのおっさんは何者なんだ」という質問は受けつけない。円山もよく分かんないし。ただ、そのおっさんが尺八を吹いていたから話がはじまったわけで、楽器オタク同士は惹かれあうということだろう。
東京は御茶ノ水なんかの楽器屋にゆくと、ギターを爪弾きながら「やあやあお宅もですか、わたしも好きでねえ」と笑い合っている中高年のおっさん連中をよく目にする。その横で細君と思しき女性がつまらなさそおおおに目を細めている光景も定番だ。


まあ円山がいちばん弾いてみたい楽器って、やっぱり琵琶なんだけどね。えへ。同意を求める気はさらさらないが、琵琶ってどきどきしませんか。『ましろのおと』は津軽三味線のマンガだが、三味線に比べるとあの構造、弦高は異常に高いしどう考えても構えづらいし撥は杓文字の親玉みたいなでかさだしあえて「弾きづらさ」を追求しているようにしか思えない。
しかしその「弾きづらさ」と、弾きづらいがゆえに起こる(西洋音楽の観点から見て)「狂った」音律こそが、日本人の音なのだ。そう、民族楽器の面白さとは、楽器の構造そのものがその民族の本質を表している点なのである。
民族楽器を知れば、その民族を知ることができる。もちろん過言ではない。


たとえばハワイには「スラック・キー・ギター」というものがある。
楽器、というか奏法なのだが、通常「ミラレソシミ」と調弦するギターを、ハワイの人間たちは「ドソドソラレ」であるとか「レラレファ#ラド#」であるとか、好き放題スラックして(緩めて)弾いている。種類は100を優に超すといわれているほどだ。この奏法の発生には、じつは歴史的な背景がある。



カメハメハ大王3世の時代、ハワイには野性の羊が大量に殖えて農作物被害などが激増し、困り果てていた。大王は一計を案じ、羊の飼いかたにおいて秀でていたスペインから羊飼いたちを招き、時局の収拾を試みた。
ところがスペイン人たちは、昼間から飲むわ歌うわのドンチャン騒ぎ(このときの様子は、メルヴィルの『白鯨』に詳しい)。治安はやや荒れたが、ただ仕事だけはしっかりやって帰っていった。
そのとき彼らはハワイに、暇つぶしに持ってきたギターを捨てていったのである。残されたギターを手にとったハワイのひとたちは、基本的な弾きかたが分からない。であるからてんでにチューニングを発明し、自分たちの気持ちのいいように弾きはじめたというのである。


円山はこの話、山内雄喜『スラック・キー・ギター入門』(リズム・エコーズ)というわりとレア目の古本から仕入れたのだったが、なぜか検索しても出てこない。なので「スラック・キー・ギター」かなんかで検索してここにきちゃったあなた、これ知ってると楽器屋でちょいと自慢できまっせ。
まあ横にいる奥さんの「だから何だってんだオーラ」に耐えられればの話だけども。そんなときは仕事の告知で延々読者に分からない話をしゃべくり続ける、円山まどかという男を思いだしてほしい。

そんなわけでまたこんな機会があれば、次は「唯一固有の音色を持たない、ターンテーブルという楽器」(だから何だってんだ)について語りたと思います。えへ。


円山まどかでした。

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